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2010年09月 アーカイブ

その土地あの土地 その3

一九六三年まで、伊豆半島は基本的にはまだ農業と漁業の地でした。

熱海から下田へと海岸ぞいの道をゆくのは、車のワダチのあとにはまったり、穴に落ちこんだりする冒険だったが、気持ちはよかった。

下田を見おろす丘の上のよい土地が坪五千円ないし八千円で買え、買い手もあまりいなかった。

下田東急ホテルが六五年にオープンしたころ、そんなところでホテルを始めるのは全く無謀だとさえ考えられた。

たいていの行楽客は北方の熱海に集まっていました。

熱海はそのころでも、コニー・アイランドの山腹版にマイアミ・ビーチを合わせたようなとところでした。

旅行客はまた川端康成の有名な踊り子の道をたどり、半島の中央を南下していました。

そこでは有名な温泉が古典的な宿屋を点々と生み出し、それらは高い松の美しい林に沿って、山腹にいくつもの階を伸ばしていました。

その土地あの土地 その4

十年後の一九七三年、伊豆を通ってみると、景色にはまだ魅了されたが、それは悲しい経験となりました。

おだやかな古い山やまは昔と変わらない。

富士のすばらしい眺めも変わらなかったが、どこへいっても、山腹を爆発させて、ブルドーザーが新しいコンクリートの道をつくった痕が生なましく残っていました。

ある日、こを通ったとき、何気なく土地を買う可能性についてききました。

会話は次のようになりました。

「あの山はほんとに美しいね。もしも、あそこに・・・」

「いや、あそこはみな三菱のものだよ」

「じゃ、トンネルの向こうの、港を見おろす土地はどうだ」

「あそこは三井不動産。その隣りの海岸は東急が数年前に買った」

「この道をゆくと、あの山に出るのかね」

「そう、『オレンジ・タウン』の標識についてゆくと出られる。連中が山腹のほとんどの土地を買ったね。しかし山の向こう側に住友がよい土地を持っているよ」

「庶民が買える土地は残っていないのかね」

「道の上のこの丘はどうだ。二千坪残っています。もちろん水道はないがね・・・」

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